2017年の年始め、一枚の写真がFacebookを中心に世界中を駆け巡りました。それは卵パックに詰められた様々なレモンが並んだ写真です。乳がんの知見を深め、乳がんに関しての情報を広く伝えるための寄付を募る「#KnowYourLemons(自分のレモンを知ろう)」キャンペーンのために作られたこの一枚は、Facebookで最も広まった写真の一つとなり、言葉の壁を乗り越え世界中に広まりました。

バイラルのきっかけは、一人の女性がシェアをしたポスト

このキャンペーンが世界中に広まったきっかけは、乳がん患者であるエリン・スミス・シェーズさんという米国人女性が、乳がんに関するキャンペーンビジュアルをシェアしたことでした。Facebookにポストをするや否や、瞬く間に4万2千人の人がシェアをしたのです。

12種類のレモンを用いて乳がんの状態を表現したこのビジュアルは、「Worldwide Breast Cancer(ワールドワイドブレストキャンサー)」代表のコリン・エルスワース・ボーモントさんが乳がんの啓蒙活動のために15年前に作ったものでした。

これをきっかけに、ワールドワイドブレストキャンサーも情報を再配信。その結果、Facebookだけでも約800万人に閲覧され、8万2千回シェアされたのです。

大手メディアが取り上げる大ニュースに発展

数日後、BBCがオンラインニュースとしてこの話題を取り上げ、また昼のニュースに代表のボーモントさんを登場させました。そしてこのニュースがきっかけとなり、世界中のメディアが「#KnowYourLemons」キャンペーンをニュースに取り上げることとなりました。

さまざまなメディアが報道したことで、1月の3週間だけで、1億6600万人のビューを得ることができ、成功したキャンペーンとして人々に知られるようになりました。

「1枚の写真を通じて、約20億人の女性に乳がんに関する知識を与え、また多くの人に乳がんの兆候を実際に見せることで、命を救うことができる可能性がある」と、ワールドワイドブレストキャンサーは伝えています。

▼ワールドワイドブレストキャンサーがポストした、キャンペーンに関するポスト:
https://www.facebook.com/knowyourlemons/posts/639869432852583

「レモン」を胸に見立てるアイデアと、一目で理解出来ることが拡散の理由

これまで、乳がんについての知識を広めるには、女性の乳房の状態を絵や写真で表現してきました。しかしFacebookをはじめとしたソーシャルメディアでは、その画像を「不適切」と判断してしまうことがありました。しかしこのキャンペーンは、この「検閲」という壁を乗り越えられる手段として、乳房の代わりに、レモンで乳がんの状態を表現した点に、成功の一因があったと言えるでしょう。

©Worldwide Breast Cancer

プロのデザイナーでもあるボーモント代表は、その能力を生かしてビジュアルを用いた乳がんのためのプロジェクトをライフワークとして長年続けてきました。キャッチーでわかり易いビジュアルのために、さまざまなものを胸に見立てたと言います。2002年、「黄色いレモンという非常に親しみのある果物を使うことで、乳がんへの恐怖も取り除くことができるのではないか」と思いつき、このビジュアルを採用したのだそうです。

また、文字の知識や学力に関係なく、乳がんに関しての情報を広めることができる、ということもキャンペーンがバイラルで広まったきっかけだと多くのメディアが評価しています。現在は紙やデジタルのパンフレットやオンライン資料は16か国語で用意されていますが、ビジュアルだけでもパッと見てわかるように作られています。文字が読めなくとも、自分の乳房の状態と比較することで十分に乳がんの自己検診が可能なのです。

▼日本語バージョンのキャンペーン画像:

©Worldwide Breast Cancer

©Worldwide Breast Cancer

©Worldwide Breast Cancer

バイラルニュースをきっかけに、一大寄付キャンペーンへ発展

代表のボーモントさんは、「乳がん関連の他の組織は、研究や治療への寄付に注力をしています。しかしまだ完治のための治療法が見つかっていない現在、人々に乳がん(を早期発見するため)の知識を与え、広めることの方が大切なのではないでしょうか」と、自身がライフワークとなるプロジェクトに取り組むきっかけを語っています。

この話題が世界に広まった直後、2月4日の「世界がんデー」に向けて、ワールドワイドブレストキャンサーはソーシャルメディア上で、さらに積極的なキャンペーン「make #lemonaid, do the #knowyourlemons challenge」 を展開しました。

▼世界がんデーに向けたキャンペーンのポスト:
https://www.facebook.com/worldwidebreastcancer/videos/1373490939349740/

 

スライスしたレモンを口にくわえ、笑顔の写真やビデオをソーシャルメディアに公開するというチャレンジは、啓蒙と同時に、活動を続けるための寄付を集めるのが目的です。

またこのキャンペーンには、イギリスのインディーズシンガーのベス・マッカーシーが「レモネード」という曲を捧げ、この啓蒙活動に参加しています。こうして現在も、ワールドワイドブレストキャンサーはネットでの情報拡散に適したいくつかのプロジェクトを進行中です。

インパクトあるビジュアルは、ソーシャルメディアを通じて、ポストしたタイミングに関係なく、突然拡散することがあることを、このキャンペーンは証明しています。同時に、ソーシャルメディアにある記事が、バイラル的に広まる際の威力を改めて感じさせる事例といえるでしょう。

text/Yukie Liao Teramachi

■World wide breast cancer ウェブサイト:

https://www.worldwidebreastcancer.org
■”Lemonade” by Beth McCarthy
https://www.worldwidebreastcancer.org/lemonade-song/
■1億6600万へのリーチに成功したことを報告する、ワールドワイドブレストキャンサーのブログ:
https://www.worldwidebreastcancer.org/blog/know-your-lemons-reaches-166-million-in-january

(参考記事)
BBC:
http://www.bbc.com/news/health-38609625
BBC テレビニュース:
https://www.youtube.com/watch?v=xvkZFwFfbCM
CNN:
http://edition.cnn.com/2017/01/16/health/lemons-breast-cancer-campaign/