音楽、映画、小説、漫画……世の中には恋心を代弁してくれる存在は山ほどありますよね。忙しい働き女子の中には、まとまった時間がとれないながらも、数分ずつ楽しむこともできる音楽と読書が欠かせないという人も多いでしょう。

今回はそんな読書の中でも、数秒で恋心をズバっと切り取ってくれる“短歌”を取り上げたいと思います。

5・7・5・7・7、たった31文字で心情や情景を切り取る短歌。「教科書に載っていたかたくるしいもの」というイメージがあるかもしれませんが、誰でも読める言葉遣いで書かれた現代の短歌も数多く存在します。

忙しく働く、恋する女子が共感できる短歌を3つピックアップしてみました。

大人の冷静さが妙に切ない……佐藤真由美さんの短歌

<マスカラがくずれぬように泣いている女を二十五年もやれば

― 佐藤真由美『プライベート』(集英社)より>

こちらは佐藤真由美さんの第一歌集『プライベート』に収録されている1首。

学生時代など若いころの失恋は悲しさにまかせて何も考えずに泣くことができたけれど、25歳にもなり仕事を持つようになればそうもいきません。人目を気にして、化粧がくずれないように、指先でそっと涙を拭う。マスカラが落ちないようなテクニックを身につけていて、それを実行できるという冷静さが妙に切ないですよね。

毎日仕事をしていると、感情のひとつひとつにいちいち没頭できるような時間は確保できません。大人になってしまったことの寂しさも感じられる1首です。

そんなの無理だって分かってはいるけれど……俵万智さんの短歌

<我だけを想う男のつまらなさ知りつつ君にそれを望めり

― 俵万智『サラダ記念日』(河出書房新社)より>

「“この味がいいね”と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」という有名な短歌と同じ歌集に収められています。

“自分だけを愛してくれる男性”というのは魅力的ですが、どこかつまらない。それでも、好きな男性には「自分のことだけを想ってほしい」と願うのが女心。完全に矛盾しており、答えが出ないことはもうわかっているけれど……、という心情を綴った1首です。

防御を覚える切ない恋といえば……脇川飛鳥さんの短歌

<後悔はしない程度に楽しんだことだしきょうも帰るとするか

― 天野慶・天道なお・脇川飛鳥『テノヒラタンカ』(太田出版)より>

こちらは天野慶さん、天道なおさん、脇川飛鳥さんという3人の歌人による短歌とイラストで構成された『テノヒラタンカ』に収録されている、脇川飛鳥さんの短歌です。

望みの薄い恋を続けていくのはかなりの精神的負担。でもそんな毎日の中で時々、「わたしも楽しんでいるんだし、後悔さえしなければWin-Winじゃん!」とカラッと気分が切り替わる日もあるのではないでしょうか。

忙しく働く女子にとっていちいち恋愛で後悔している暇なんてありません。自分で自分をある程度守りながら、目の前の恋を続けていく姿勢が明るくも切ない、大人の1首です。

以上、“恋する働き女子の心に響く短歌3選”でしたが、いかがでしょうか?

昔の日本では和歌として恋文の役割を果たしていた短歌には、恋心を歌ったものが数多く存在します。ぜひ今の感情にぴったり寄り添う1首を見つけてみてくださいね。

【参考】

※ 佐藤真由美(2005)『プライベート』(集英社)

※ 俵万智(1987)『サラダ記念日』(河出書房新社)

※ 天野慶・天道なお・脇川飛鳥(2002)『テノヒラタンカ』(太田出版)

元の記事を表示