「何回言ったらわかるの!」そんな台詞が口癖になっていませんか? そういう時は叱る、悪いことをする、叱る……の悪循環に陥っている可能性大です。
今回は『あんふぁんぷらす子育て&マネーセミナー』で伺った、株式会社子育て支援・代表取締役の熊野英一さんのお話を参考に、子どもが困る行動をする背景や、そんな時親が叱るのではなく、すべき接し方についてお伝えします。

 どうして子どもは親の困ることをするの?

熊野さん曰く、子どもの行動の目的の多くは“親の注目を得る”こと。注目を十分に得られている子どもは、健全にすくすく育ちやすいのだそう。

一方、注目を十分に得られていない子どもは、なんとかして親の目を自分のほうへ向かせようとして、不適切な行動を起こして注目を浴びようとします。

二人以上の子どもをもつ方に関しては、上の子の“赤ちゃん返り”が分かりやすい例と言えるでしょう。

そうでない方も、長電話をしているときや忙しいときに限って「ママー!」と、子どもがわざとのようにちょっかいをかけてくるといった経験があるのではないでしょうか。これは自分に注目してほしいサインです。

熊野「子どもの“見て見て!”、“こっち来て!”といった要求に、“あとで”と対応がおざなりになっていると、どんどん子どもは不適切な行動を起こすようになります。叱られてでも良いから注目を得たい、という作戦を、わざわざ選択しているということです。

子どもが困る行動をする背景には、親のこういった行動が関わっているのです」

子どもの適切な行動に“注目する”

子どもが適切な行動を選択するようになるポイントは、子どもの適切な行動に対して“注目”をすることだそう。

身近なところでいくと、片付けをしたり、お手伝いをしてくれたり、といったことです。

熊野「こうした自立に向けた行動ができているときには、“えらいね、すごいね”とほめ言葉をかけるよりも、“ありがとう”、“助かるわ”と感謝を伝えましょう。これが子どもを勇気づける注目の仕方です。

特に注目に値しないような、ただ座っているだけ、のような時にも“あなたが産まれてきてくれて、嬉しいよ”と、子どもの存在そのものにいつも注目していることを伝えてください」

適切な行動(ただ生きているだけでも、十分に適切な行動ですね)への注目を日頃から行っていると、子どもは自分が役に立った喜びを知り、自分の存在価値を見出すことができるのだと言います。

自尊感情の高い子どもは、自分自身だけでなく他者をも受け入れていけるようになりますので、親の話を聴くことも、自分の意見を述べることも自然にできるようになるのだとか。そうなれば子どもとの関係が今よりぐっとよくなると思いませんか?

不適切な行動には“注目しない”

一方注目してはいけないのが、子どもが困った行動を起こしたときだと言います。

熊野「子どもの適切な行動に対してさほど注目しないのに、不適切な行動をとったときにだけ怒る、つまり“注目”する、これはやってはいけません。

不適切な行動を起こしたときに親が怒りにやってくる、そうすると、子どもは“困った行動を起こせば注目してもらえるんだ”と思うようになってしまいます。その結果、不適切な行動が増えてしまうのです」

では不適切な行動を起こしたときにはどのように対応すればいいか? それは注目しないこと、だそうです。“無視”とは異なりますので、その違いに注意してください。

熊野「“あなたが注目してもらいたくてやっているのはわかってるよ。でもママはその手にはのりません。いちいち叱らないよ”と毅然とした態度で注目しないことを伝えるのです。

“その代わりに、あなたがお話を聴いてほしいときにはちゃんとお話聴くよ。いつもあとでになってごめんね”と、子どもと約束をしましょう」

子どもは叱られるより、話を聴いてくれるほうがよっぽど嬉しいのです。当然ですよね?

適切な行動と不適切な行動の見分け方は?

ときに、適切であるか不適切であるか、判断が難しいことがあります。

熊野「判断に迷ったときは、“この行動は子どもの自立に繋がるものか?”ということを考えるようにしましょう。子どもの自立につながる言動は“適切”です。

例えば子ども同士でおもちゃの取り合いになって、片方がもう片方を押したとします。大人はこの結果だけを見て、押したほうが悪いと叱ってしまいがちです。

たしかに押してしまったことは不適切な行為ですが、それには“おもちゃを取られたくない”という想いがあるはずなのです。その想いは自分に正直な気持ちであり、適切であると言えます。

こういった場面では、まず適切な行為に注目しましょう。“最後まで遊びきりたかったんだね”と共感を示すのです。また、子どもの話を聴くのです。気持ちを受け入れることで、子どもは安心し、相手に対して耳を傾けることができるようになります。

“よくわかるよ。でも押してしまうのはどうかな?” 聞く耳をもつことができたら、このように不適切な行動について話しましょう。一度共感してもらった相手には、子どもも素直に受け入れる心を持つものです」

はじめのうちは、“自立に繋がるかどうか?”と判断に迷うこともあるかと思いますが、普段から意識をすることでその判別もできるようになりそうですね。

叱ることを繰り返していくと、親への反抗心が高まっていくばかりです。叱って子どもを親の支配下におくのではなく、一人の人として敬意を持って接することで、自立した大人へと育っていってくれるでしょう。

(ライター 沖田かへ)

【取材協力】

※ 熊野英一・・・株式会社子育て支援代表取締役。アドラー心理学に基づく「勇気づけコミュニケーション」を広める講演活動や、書籍出版を積極的に行う。書籍「アドラー子育て・親育て 育自の教科書―父母が学べば、子どもは伸びる」(アルテ)が発売中。

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