話題のあの女性なら、オフィスでのトラブルをどう切り抜けるだろう。現実にはありえないシチュエーションを、妄想してみたい。でも、ただ妄想するだけじゃつまらない。

そこで編集部はコラムニストの河崎環(かわさき・たまき)さんへ執筆をお願いに。『女子の生き様は顔に出る』(プレジデント社)など、女性の考察に定評がある河崎さんに、鋭い目線で妄想していただきました。初回は女優の吉高由里子さんがオフィスにいたら、です。

天才肌は扱いにくい?

マイペースな不思議ちゃんで、才能があるのはわかる。社内でも評価されている。でも、つかみどころがなくて、私自身、彼女に好かれているのか嫌われているのかも不明……。そんな少々「扱いにくい」人材があなたのオフィスにいたら、どうしますか?

美貌も実力も人望もある女優の吉高由里子さんは2017年のドラマ『東京タラレバ娘』で主人公・鎌田倫子役を演じ、2014年の『花子とアン』以来の連続ドラマ主演ということもあって、大きく注目されました。

16歳の時に原宿で買い物中にスカウトされ、翌年には映画『蛇とピアス』で初ヌードを披露する熱演で新人賞を総ナメ。その演技力には定評があり、2014年にはNHKの朝ドラ『花子とアン』の主人公として10ヶ月にわたってNHKの朝の顔を務め、年末には紅白歌合戦の赤組司会に抜擢されます。

吉高さんは真面目で自覚のある「不思議ちゃん」なのでは?

ところがその後、キャリアのピークにある中で、突然2年間の休養。原因は燃え尽き症候群や、信頼していたマネージャーの退職、交際していたミュージシャンとの破局などとさまざまに報道されましたが、どの論調にもつきものだったのが「不思議ちゃん」「情緒不安定」など、彼女の個性的な性格を評した言葉でした。

舌ったらずでのんびりとした喋り方から、やたらと「不思議ちゃん」と呼ばれる吉高由里子さんですが、彼女はそんなに周囲からテンポのずれた人でしょうか? 吉高さんが苦悩しながらも走り抜け、多くの感動と共感を呼んだ2014年の朝ドラでは、クランクアップのときに「現場でみんなに愛される座長・吉高由里子」へ多くの共演者やスタッフの口から感謝の言葉が出たほど、彼女は若くして主演女優としての責任のもとに場を調整して明るくする、サービス精神の持ち主。それだけに、大仕事をやり遂げて休養が必要になるのはもっともと考えられます。

実のところ、周囲が勝手に抱いている印象とは裏腹に自分を客観的に見ることができているからこそ、吉高さんは女優としての演技力が高いのでは。つまり、自分が周囲から不思議ちゃんと目されていることも、その原因も、彼女はしっかりと自覚した上でその状態にあるのですよね。なぜなら、自分のペース(芸風)は自分の魅力として維持しつつ、他の人も心地よくその場にいさせられることこそが、彼女の強みだからなのです。

吉高型「天才肌でマイペースな同僚・先輩」との付き合い方

では、そんなマイペースで天真爛漫、一見空気も読まずに好き勝手やっているようでいて評価されている個性的な同僚や先輩があなたのオフィスにいたら、どう付き合えばいいのでしょう?

まず、感情として、憧れたり、逆に嫉妬したりという気持ちがせり上がって来るのは仕方のないことです。実際、吉高型人材ははたから見れば「自由だなぁ……」とため息が出るほど。一見苦もなく高いパフォーマンスを打ち出し、上司にも可愛がられ、しかも周りを上手に巻き込んで、天真爛漫に振る舞う余裕まである。「愛される天才」……ニクい。

憧れる一方で、「ああはなれないな」と自分を卑下してしまうような気持ちにもかられます。『花子とアン』のような一流の大型プロジェクトを成功に導いた直後、社内や取引先からの期待も最大値を振り切っている中で、「2年間お休み」を言い出す度胸! それって、確実に自分が人材として求められている、これからも求められるって、どこかで確信しているからだよね……と、一挙一動にコンプレックスを刺激されてしまうかも。「この人とどう付き合ったらいいのだろう?」——日々地道に仕事を頑張っている私達からすると、正直扱いにくいな、苦手だな、と思うこともあるかもしれません。

嫉妬や卑下は時間のロス! 生産的な姿勢とは

でも、一緒の空間にいて共に仕事をする仲間として、嫉妬や卑下などのネガティブな感情は、自分を削ってしまうもの。では、そういう気持ちを超えた、別のどんな感情で彼女を迎え、どう理解し、付き合ったらいいでしょうか。

まずは、彼女のようになろうとか、彼女に勝とうとしないこと。吉高型人材は、「天賦の才」が特徴。よほど自分も同じ土俵で戦えるとの自信があるなら話は別ですが、逆に同じレベルで戦える人なら、その人も吉高型人材なので、「どう付き合えば?」なんて思い悩みません(笑)。

天賦の才ではなく地道な努力で自分を磨いて生きて行くタイプなら、そもそも「戦い方」や「流派」が違うのですから、吉高型人材とは競り合わず、彼女と補完し合える人材となるのが吉。いっそ「違う星から来た人」くらいに認識し、ポジティブな好奇心と敬意をもって観察してみましょう。すると、吉高型人材にも弱点——例えば、メンタルが繊細に転ぶ時があるとか、ミクロは感嘆レベルでよーく見えているのに、マクロが見えていないとか、時間感覚や金銭感覚がごっそり抜けているとか——があるはず。そこをサポートできる、「天才を支える2番手」あるいは「天才とコンビまたはチームを組めるメンバー」ポジションを狙うのです。そして、それをあなたのキャラとすることで、周囲からも一目置かれる存在となることができます。

天才的な起業家の横には必ず番頭役がいる

嫉妬心を超えて彼女をサポートし、一緒に何か面白いものを作ろう、この人のパワーを使って向上していこうとするのが、対・吉高人材戦略。成功する起業家には、その傍らに必ず番頭役がいると言われます。というのも、天才的な人材というのは、いわば「誰も知らない踊りを一人で踊り始めた人」。その様子を遠巻きに眺める人々の中から飛び出し、一緒に見よう見まねで踊り始める「最初の勇気の持ち主」が、天才と二人三脚で勝ちを目指せる人なのです。

天才とお互いに気持ちよく仕事をしていくための付き合いかたとは、天才の敵になるのではなく、味方、あるいはファンになること。「この人の才能のために私はどういう協力ができるか」「私の役割とはなにか」「彼女のチームのためにどういう貢献をしていけばいいのか」を意識していくことで、あなた自身も彼女の突き抜けたパフォーマンスや発想に刺激され、受け取るものがあるはずです。お互いに磨いて上昇していく唯一無二の関係性を築けた時、「1+1=2」以上の結果が手にできるチームワークの魔法に、あなたもかかってしまうに違いありません。

吉高由里子さんが主演した『東京タラレバ娘』でもまた、共演者である榮倉奈々さん、大島優子さんと3人で声を合わせて「この現場が大好きだった」と公言し、ドラマの撮影は終始明るい雰囲気だったのだとか。いま、職場に吉高型人材がいて、どう付き合っていいのか考えあぐねているあなた。主人公の倫子(吉高さん)に対する香(榮倉さん)ポジション、小雪(大島さん)ポジション、あるいは恋愛の相手としてのKEY(坂口健太郎さん)や、彼女を優しく見守った早坂さん(鈴木亮平さん)ポジションなど、ドラマになぞらえる中で、自分が取れる、取りたいポジションを考えてみてもいいかもしれませんね。

そうそう、私としては、ずっと年下なのに倫子(吉高さん)が嫉妬するくらいの才能があり、むしろ倫子へ恋愛や仕事の助言をし、時には喝まで入れていたマミちゃん(石川恋さん)こそが超実力派の最難関ポジションだなぁ……と思いながらドラマを見届けたものでした!

(河崎 環)

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