仕事が大好きだからこそ、出産するまでたくさんの葛藤があったというコラムニストの犬山紙子さん。前回に続いて、第2回はつらかった妊娠初期の体調不良や仕事への焦り、「自分が子どもよりも仕事を優先してしまったんじゃないか?」と、出産後にも感じてしまいがちな後ろめたさとの戦いなど、リアルな心境を語っていただきました。

実母の介護をしていたという20代の時、「なんでも私がやらなきゃ!」と頑張り過ぎてしまったという犬山さん。一度メンタルのバランスを崩したからこそ、「人に頼ることが大事」と具体的なアドバイスもいただきました。

どこから無理になるのか、曖昧だった妊娠中

——出産までに、「今ある仕事は全力で繋がなければいかなきゃいけない」という思いもあったかと思います。焦りと体調のバランスは、どうとっていましたか?

犬山紙子さん(以下、犬山):「妊婦は無理しちゃいけない」と言われますが、最初はどこからが無理なのかわからなくて。仕事はOKをもらっているけど、出張はいいのかなとか。出張の時も、母子手帳を持ち歩いて、現地の緊急病院を探してから行動するようにしていましたね。

妊娠中は何より、つわりがつらかったです。私の場合は食べていないと気持ち悪くなってしまう、食べづわりだったのですが、番組出演している間、3時間ずっと食べられない。一回、CM中に吐いてしまったことがありました。これはマズイと思って、以降はCM入った瞬間にこっそりグミを食べてしのいでいました。それも、「何こいつ仕事中にお菓子を食べてるんだ?」と思われないだろうかとすごくヒヤヒヤしながら。

——つわり期間は、まだ周囲への報告前ですよね。

犬山:そうですね。妊娠しながら仕事をするって、とても大変なことなのだと実感しました。切迫早産気味になってしまった時は「子どもよりも仕事を優先してしまったんじゃないか?」という罪悪感も襲ってきて、メンタルも本当にしんどかった。

外での打ち合わせや仕事でお酒を勧められても、「風邪を引いているから」と言えますが、タバコを吸う人に「タバコ吸わないでとは言えない……」と悩んだことも。今となってはタバコを吸う人にはこっそり妊娠していることを伝えるのがよかったかなとも思います。妊娠して「他の人に迷惑がかかるかも」と妊婦さんが心配する環境自体おかしいですし。

そのためにも妊婦さんが仕事をすることって大変だということを伝えるのが大事だなと思いました。会社で研修の機会があってもいいのかも。

仕事も「断ったら来なくなるんじゃないか?」という恐怖から、結局ほとんど断らず。でも、妊婦は無理をするなとも言われている。そのバランスにはずっと悩みました。

産んでからも罪悪感があった

——妊娠初期の流産は、ほとんどが染色体異常によるもので、母体が原因となるケースは少ないと言われています。それでも、多くの人は罪悪感を覚えたり、悩んだりしていますよね。

犬山:そう。関係ないのに、仕事をすると罪悪感を覚えてしまう。産んでからもそうです。

以前から「仕事もしなきゃいけないし、保育園に預けるぞ」と思っていたし、保育園にはプロに育児を見てもらえるというメリットもある。子どもにとっても、多くの人と触れ合えるいい環境だと思っていた。でも実際に預けてみると「あれ、一緒にいてあげなくていいのかな?」って思ってしまう自分がいるんです。全然悪いことじゃないのに。

産んでみたら、想像以上にずっと一緒にいたくなってしまって。でも、やっぱり仕事もしたいししなければいけない。

——子どもを産んで変わった?

犬山:私も産むまで疑問に感じていたところなのですが、変わるというよりは、今までの自分の軸がそのままあって、そこに新しい感覚が1つ増えた感じです。仕事が好き、ゲームが好き、趣味が好き、友達が好き、にプラスして「子どもが愛おしくてしかたがない」。

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——プラスになっている分、キャパオーバーすることはありませんでしたか?

犬山:最初は混乱しました。友人に相談してみたら、みんな「とにかく人に頼れ!」ってアドバイスをくれたんです。やっぱり、両立するには人を頼らないと絶対に無理。夫、保育園、行政サービス、新潟に住む夫のお母さん。人の助けを借りることで、自分のバランスをなんとかとっています。

自分のメンタルを過信せず、人に頼ることを覚える

——働きながらの育児は、実家が近くて、タッグを組める夫がいて、ホワイト企業勤めでないと難しい……というイメージがあります。「全部自分でやらなきゃ」と頑張り過ぎて、潰れてしまう人もいますよね。

犬山:私の場合、20歳からずっと母親を介護していたんですが、「なんでも私がやらなきゃ!」と頑張り過ぎてバランスを崩してしまったんです。今振り返ると、死ぬほどストレスがたまっていました。当時付き合っていた彼氏に電話しては怒り続けたり……。

その後、介護のヘルパーさんに来てもらったり、姉と弟の力を借りるようになって、ようやく心が楽になったんです。「これでいいんだ」と思えたから、子育ての時も「絶対に人を頼ろう」と思っていました。

最初はシッターさんに預けるのも抵抗があるかもしれない。なので、家に自分がいるときに頼んでみるのもいいかと思います。子どもも慣れるし、自分も原稿が書けるし。いいことづくめでした。

——まずは思い切って預けてみることが大事なんですね。

犬山:もちろん信頼できる人かどうかはきちんと見てから。保育園も見学をしっかりしてからですね。罪悪感との戦いはきっとあるはず。でも、バランスをみて、臨機応変に罪悪感で苦しくならない時間で、人の力を借りたらいいと思います。バランスが崩れたら仕事も育児もどちらも回らなくなる。どこから無理かわからないというのは出産後も往々にしてあるので、気負いすぎないのが大事かな、と。

自分のメンタルを過信せず、SOSが出ていないか注意深く自分を観察するのがとても大切。それはパートナーに対しても同じで「パートナーが無理してないかな? しんどそうじゃないかな?」と日々気にかけるようにしています。

(撮影:池田真理)

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